コンサルティング事例

IPO に向けた労務診断の実施と労働時間制度・給与体系の見直し、諸規程の整備

依頼の経緯

IPO を目指すA 社は、監査法人から労務リスクの懸念があるとの指摘を受け、労務上の問題点の洗い出しと問題の解決につき支援願いたい、との依頼によるもの。

コンサルティング内容

(1)労務診断の実施

コンプライアンスの遵守状況と労務リスクの状況を洗い出すことを目的に、下記の観点から労務診断を実施。

  1. 労働時間の把握方法の妥当性(自己申告制の運用状況)
  2. 就業規則や給与規程等の諸規程の法定要件の充足状況と運用との整合性
  3. 労使協定(賃金の一部控除、一⻫休憩の適用除外、時間外・休日労働、育児・介護休業等の適用除外等)の締結状況
  4. 労働安全衛生法に基づく法定事項(衛生委員会、衛生管理者、産業医の選任等)の充足状況
  5. 割増賃金の算定方法(単価、割増率、時間集計方法)の妥当性と適正支払状況
  6. 社会保険・労働保険の適用(加入)状況(パート、出向等の加入対象の範囲等)
(2)労働時間制度と給与体系の見直しに関するコンサルティング

労務診断の結果、未払賃金が発生している(固定残業手当を支給するも、当該手当を超えて残業をした場合にも超えた分について支払いを行っていない)ことが明らかとなり、労働時間制度と給与体系につき、抜本的なみなしを図ることとした。
そこで、A 社の業務内容を分析しつつ、A 社の実態に沿った労働時間制度の検討をすすめた結果、職務内容に応じて、専門業務型裁量労働制、事業場外みなし労働時間制、通常の労働時間制度の3つを適用させることが可能と判断し、導入することとした。
一方で、手当についても、3つの労働時間制度にあわせて、それぞれ裁量労働手当、みなし手当、業務手当(固定残業手当)を設定することとした。手当の設定にあたっては、一定程度の人件費増を前提に、現状支払われている月例給与から一部を切り出す形でこれらの手当を支給することとした。

(コンサルティング項目)

  1. 労働時間、休日の適正な管理方法の検討
  2. 変形労働時間制(1ヵ月単位、1年単位)の導入の可否の検討
  3. 裁量労働制(専門業務型、企画業務型)の導入の可否の検討
  4. 裁量労働手当、みなし手当、業務手当(固定残業手当)の支給水準の検討
  5. 残業時間予測に基づく人件費への影響シミュレーション、など
  6. 新制度導入に必要な就業規則の見直し、労使協定の作成
  7. 社員説明資料および個別通知書の作成
(3)諸規程の整備

一連の労務診断およびコンサルティングを踏まえて、法定要件のクリアと労務リスクをミニマイズすることを目的に、必要な諸規程の整備を行った。

(整備対象規程)

  1. 就業規則
  2. 給与規程
  3. 育児・介護休業規程
  4. 退職金規程
  5. アルバイト就業規則
  6. 契約社員就業規則
  7. 定年再雇用規程
  8. 出張旅費規程
  9. 社宅管理規程
(4)人事労務相談顧問

上記(1)〜(3)のコンサルティングにより、人事労務管理体制として一定の整備が図られたが、A 社は適正に運用を行うため、そして労務トラブルの発生を予防するために、アドバイザリーが必要と判断し、当社と人事労務相談顧問を結び、継続的に支援することとなった。